スタートアップ狭まる出口 「過大評価」が売却の壁に
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先日、大企業によるスタートアップへの投資に対する減税施策についての記事が出た際には、称賛する声が多数上がっていました。
社会全体のリソースを新興企業により振り向けるという大枠の方向性には賛同しますが、私はやや懐疑的な目で見ています。
ただでさえ資金は過剰流動気味で、CVCによるミスプライシングと思しき評価が散見される中、野放図な過剰評価の投資が進むことになれば、出口となる受け皿がなくなってしまうからです。
よしんば上場を実現できたとしても、その後にモメンタムを失うPost-IPOスタートアップが相次げば、スタートアップという存在そのものが社会からの信任を得ることができなくなってしまいます。社会からの信任を得られない活動が、世の中に定着するはずがありません。
仮に大企業に対して優遇施策を採るのであれば、スタートアップへの投資よりもM&Aではないでしょうか。
留意すべきは、少なからぬ事業会社がスタートアップへの投資に際し、「金銭的リターンを追求してないこと」を明確に掲げている点。投資する大企業側は必ずしもスタートアップの「出口」を求めていませんし、自社事業とのシナジー創出を実現するうえで、むしろイグジットしないでほしいというケースもあります。この点で、目線が一致するとは限りません。
「スタートアップ出資、1億円以上で減税」
https://newspicks.com/news/4443549/?utm_source=newspicks&invoker=np_urlshare_uid101617&utm_campaign=np_urlshare&utm_medium=urlshare
自社で有望な投資領域を特定できないのであれば、株主還元に振り向けて然るべきではないかと思いますが、このあたりの認識は4年半前に書いたコラムからほぼ変わりありません。
「ベンチャーバブル? スタートアップの「資金調達」を考える」
https://newspicks.com/news/1004111?utm_source=newspicks&invoker=np_urlshare_uid101617&utm_medium=urlshare&utm_campaign=np_urlshare
この点、むしろ大企業へのエンゲージメント投資の方が今だとより意義があるのかもしれません。つい昨年の日経の記事では、
「国内スタートアップ買収件数が18年に過去最高」(※)
とあったばかりでしたので、ここ数年ずっとダウントレンドというよりは、19年度は少し落ち込んだということなのかなと思います。
ただ、スタートアップの出口の9割がM&Aである米国と比較すると、まだまだ受け皿が少ないことは間違いないです。
日本のスタートアップエコシステムでいうと、私はまだまだ「投資金額」も「スタートアップの数」も「受け皿」もどれも不足していると思っていますが、
朝倉さんのおっしゃる通り、今特に足りないのは大企業による受け皿なのかなとは思います。
※ https://r.nikkei.com/article/DGXMZO38156740U8A121C1MM8000weworkは、最終的な株式の持ち手となる投資家の手に株が渡る前に、過剰に評価額を上がっていたことから、ホリエンモンからババ抜きと評されましたが、それに今苦しんでいるのはソフトバンクという構図です。
多かれ少なかれそう言った状況が他のスタートアップで生じているからこそ、Exitしづらいということが発生しているのかと思います。
資金流入がある事自体は良いことですが、ちゃんとExitができて、より成長投資に使われるといった流れがあってこそ、エコシステムが発展します。
ダウンラウンドの調整などで本業が振り回されないためにも、起業家自体が適切に資本政策に関する知識を付ける、しっかりとした相談相手をみつけるなど、自衛をしつつ資金を得ていく必要があります。