『ブラタモリ』を学者たちが「奇跡の番組」と絶賛する理由
コメント
注目のコメント
本当に素晴らしい!(そして、羨ましい!)
ある意味NHKだから成せる番組。
そして、全員がブレず、地学や歴史、そしてタモリさんに向けて作った ているから、結果、クオリティを保ち、
そして結果、視聴率も高い!
あと、スタッフも出演者も街や土地を、仕事ではなく本当に面白がっている空気が伝わってきます。
それも、気張らず、力抜いて面白がっているから息が続く。
(こうやれば、数字が取れるマインドだけの番組作りの時代と違うし、視聴者も媒体がなんであれ面白いものを見たいはず。
民放も、ブラタモリから学ぶものが沢山あるはず。)この講演の要旨は学会のウェブサイトにあります。
日本地球惑星科学連合2019年大会/ブラタモリの探究-「つたわる科学」のつくりかた
https://confit.atlas.jp/guide/event/jpgu2019/session/O01_26PM2/date
この中で4番目の「[O01-08] ブラタモリ番組制作に学ぶ博物館のアウトリーチ活動の在り方」では次の項目を挙げています。
1)普段まったく地質や地形に興味のない市民の思考に即した展開をする
2)地域に関する様々な分野の情報(自然科学・歴史・文化)を集約し,関連付け,市民生活に直結させる
3)論理よりもストーリーを重視する
4)わかりやすくするために,正確性を犠牲にする勇気をもつ
5)科学的知識を説明するのではなく,知的に楽しむ姿を見せる
特に3と4は私も意識しながらも非常に難しいことであり、時々このページを見て再認識するようにしています。ブラタモリでよく取り上げられる、いわゆる地学の中でも地質学や鉱物学に近い分野というのは普段あまり脚光をあびることはなく、日本ではもっぱら気象や地震に話題を持っていかれ、どちらかといえば日陰に置かれている学問であったと思いますが、この番組のおかげで、身近で興味深い学問であると思ってもらえる機会が増えたことが何よりも素晴らしいと感じています。
制作陣へのインタビュー記事では、幅広く深い教養を持つタモリさんをあっと驚かせるようなロケになるように、文字通り靴底を減らして綿密な取材を行っているとのことでした。また番組の内容が地球科学から人文地理、歴史、芸術など幅広い分野にまたがっているため、様々な専門家の意見をきちんと聞いていること、そしてそれが一つのストーリーを頭から結果まできちんと追っているために、制作チームが内容をきちんと自らの言葉で理解できていることが、番組の高い質を保っているものと思います。タモリさんと制作陣のある意味での競争関係が、番組の質を維持しており、かつストーリーも日本や世界の各地に存在することから数年でネタ切れになる心配もほとんどないというのもポイントでしょう。
地質学でネタ切れになりそうになったら、ぜひ気象のほうに切り込んでみていただければ、と思います。たとえば飛騨の合掌造りの家は、冬に豪雪となりかつ夏は盆地で暑くなりやすいという特徴によるものですし、沖縄の琉球建築も、台風の強風に対して倒壊しないような工夫にあふれています。
学問を学んでも「これって将来役に立つの?」というのはよくあるセリフですが、興味を持って調べれば、役に立たない学問はありません。それを気づかせてくれる、近年稀に見るテレビ番組です。長く続いてくれることを期待します。