トンデモ数字に振り回されるな 繰り返される「終末期医療が医療費を圧迫」という議論
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数字を除いても論理展開としてこれはダメだろうと思っていた落合陽一古市憲寿対談だが、引用元の医療経済の専門家から、データの参照の仕方自体どうしようもないという指摘が…。延命治療の老人医療費に占める割合は3.3%に過ぎないという。個人的に件の対談でもっともどうかと思ったのは、落合さんが「今の政権は強そうだし」と、終末医療保険適用外化を強い政府決定でやったらという提案をしているくだりだったが、本記事では他ならぬ安倍首相自身が、尊厳死の問題を医療費との関連で語ることはやってはいけないこと、と発言しており私もそれに賛成であると二木さんが述べているのは極めて皮肉な構図と言えそうだ。
高齢者のQOLを保持できる技術的解決方法を探求している立場の者である、というのが先の記事をめぐる論争勃発時に落合さんが表明した主張だった。ところでそのQOLを毀損する延命医療の象徴と目されているのが「胃ろう」だと思うが(くさか里樹のマンガ「ヘルプマン!」の胃ろうの回は衝撃的だった)、先日放送されたTBSラジオSession-22は「胃ろう特集」になっていた。
https://www.tbsradio.jp/332529
【音声配信】「安楽死や終末期医療をめぐる議論をきっかけに知る。胃ろうの実情」川口有美子×佐々木淳×荻上チキ▼2019年1月16日放送分
ALS介護の経験からNPOを運営する川口有美子さんらの話で、胃ろうをしたからといって絶望している人ばかりではないし胃ろうからの回復例もあり、「胃ろうをしてまで生き続けたくない」と言っていた人たちでも、いざそうなったらその時なりに自らの人生を生き続けようとするのだ、という形で[胃ろう=QOL終了]的な見方に反駁する内容になっているのが印象的だった。
このラジオ番組中ではまた件の対談中では痰吸引が資格を必要とする高度な医療行為のように描写されていたが、現在でも一週間ほどの訓練を受ければ患者家族でもやってあげられる行為だと知り、そうなのか、と感心。同時に落合さんの医療テックへの取り組みというのはどれだけの知見を携えたものなの?という引っかかりも感じた。有能な技術者がこの分野に参入する事は賛成なので、不用意に死の自己決定権を統御し、かつ老年世代への老害視を惹起しかねない論調は避けてほしいと改めて思う。20年30年後の我が身なのだし。『現代の魔術師』『新進気鋭の社会学者』と言った肩書があるだけで床屋談義に過ぎない物を大した物であるかの様に有り難がる風潮が良くない。
専門家に聞きさえすれば、この記事のような明快な応えが返って来るのだから。