【分析】あなたの業界は大丈夫?2018年の倒産トレンドを振り返る
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倒産件数がどんどん減少しているのに、「人手不足倒産」なる一見して摩訶不思議な事態が逆に増加していることに、日本を取り巻く大きなトレンドの変化を感じます。
今日本で起こっていることは単なる人手不足なのではなく、マクロ的な雇用のミスマッチです。
例えば人手不足が深刻な飲食業の有効求人倍率は8.99倍(東京都)、一方で一般事務職の有効求人倍率は0.3倍あまりで、実に30倍の差があります。
つまり、経営者からすると取りたい人がとれず、被雇用者からすると働きたい仕事に就けないという、どちらも不幸になっている構図なのです。
しかも悪いことに自動化、AI化が進めやすい事務職が人気が高く、どうしても対人対応が求められる飲食や福祉、建設などが人手不足という状況なので、テクノロジーによる生産性の向上の効果も限定的ときています。
又売り手市場といわれている新卒市場でも、300人未満の中堅中小企業の求人倍率は6.45倍に対し、5000人以上の大企業は0.39倍と大差があり、企業規模による格差は過去最大になっています。
このような労使間の雇用のミスマッチが拡大すれば、いつの日か、飲食店の深夜営業中止どころか、頼んだものは配達まで一週間かかり、雨漏りしても修理は1ヶ月後、引越ししようにも業者が来るのは2ヶ月後、電車は遅れが当たり前で、製品の納期も品質も守れないという世界が、遠からず日本にも到来するでしょう。
人手不足倒産という現象は、悪くみればこうしたいつか来るかもしれなモノの影だと言えるかもしれません。
雇用のミスマッチが起こる原因は色々あるでしょうが、そもそも終身雇用や新卒一括採用を前提に構築されている労働マーケットが歪で、市場原理が正しく機能していないからだと考えられます。
その日が来る前により人材の流動化を容易にするような法規制や労働慣行の整備が必要だろうと思います。借入金の返済猶予が認められやすくなった結果、倒産が減っている。
一方、従業員の高齢化などによる「人手不足倒産」の増加が深刻化しているとのこと。
「事業転換の必要性を感じている。が、そもそもの社員数がいない中で、どうやって新規事業を考えていくんだ」
という声を聞きます。日本は起業率も低いが、廃業率も低いのも課題と理解しています。「倒産をさせないこと」は果たして企業のためなのか、それともの銀行の債権の健全性が目的なのか。
本記事でも挙げられた「中小企業金融円滑化法」により、到底返済のメドも立たない多くのゾンビ企業の延命を可能にしました。M&Aによる事業承継も事業が衰退し財務が痛んだ後では、支援者も見つけにくくなります。問題を先送りせず、先が見通せない企業の撤退戦を容易にして新陳代謝を図ること、セーフティネットは事業の延命とは別の文脈で考えること、が必要と思います。