都営バスの全運転手に脳のMRI検査義務づけ 東京都
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医師として賛同できません。というのも、頭部MRIはくも膜下出血の原因である未破裂脳動脈瘤を探すためですが、そもそも数%もない有病率であり発見できないこと、そして発見したとしても、手術は長時間のクリッピング術で合併症もあることから、手術適応のものは限られる一方で、確率は1%満たないものの破裂のリスクに怯えながら生活する。うつになる人もいるという論文も多くあります。
だからこそ都のお金でやるのではなく、希望者には一部負担します程度にとどめておくのがいいと思います。
費用対効果でいうと、都民の税金を使うべきではないと思います。
やるべき予防まとめ貼っときます。http://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_medicalcheckup.htmlやはり医療者と非医療者はすれ違うのですね。勉強になります。
50歳以上のドライバーが多い、50歳以上で若い人よりクモ膜下出血が多い、といっても、バスドライバーでクモ膜下出血が多いという話にはなりません。
少し話が変わりますが、一過性の意識消失(失神)を起こす確率は人生において3%ほどと言われており、珍しいことではありません。
1人の運転手が運転中に意識を失う確率は0.33%/年という報告があります。ただ、失神のほとんどはクモ膜下出血ではありません。
さて、脳ドックで何を見つけるか、意識消失の原因とすれば、クモ膜下出血の原因である脳動脈瘤でしょう。クモ膜下出血の発症率は50歳で増えると言っても1万人あたり4-6人です。
クモ膜下出血は失神ではなく、意識の戻らない意識障害となることもあるので失神の統計には一部しか入ってませんが。
また、未破裂動脈瘤はどれくらいいるかと言うと100人中3-6人と少なくないものです。クモ膜下出血を生じた方の80%は10mm以上であったことから以前はそこが治療ラインでしたが、現在は血管内治療も進み5-7mm以上で治療を考えます。
なお、脳ドックですが、有用性を示すエビデンスはありません。ただ、未破裂動脈瘤は見つけることで、見つけられた人の生活の質が下がることが報告されています。そしてそれらを治療することにより明確なメリットは統計的には示されていません。さらには中途半端なサイズのものが見つかった場合にどうするのか、答えはなく、心配でうつ病を発症することもあります。治療してしまう手もありますが、治療の合併症リスクもあります。
また、医者に聞いたからって何でもわかるわけではありません。スクリーニングして、「で、どうするの?」ってなります。脳梗塞や脳出血の痕跡が見つかっても運転を止めたり配置転換する根拠にはなりません。当然、脳動脈瘤もしかり、です。
あまり本質的な介入には思えません。さらには脳ドックは最近格安のドックが話題になっているので、20000円のところで受けさせるなら税金のムダ遣いです。
せめて、このデータを追跡して、脳ドックの有効性や無効性などをフィードバックしていただきたいものです。