空港トイレの表記をチェックすれば、その国の歴史がわかる
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鈴木教授はオスマン帝国研究の第一人者ですが、元々はインカ帝国への興味から研究者になられたとのこと。
本文にはトイレの話は全然ないので、インカの話などを少し。
インカは1572年、ピサロ率いる僅か200名に満たないスペイン軍によって滅ぼされ、広大な帝国は跡形もなく消滅しました。
何故、強大なインカ帝国はあまりに呆気なく滅ぼされ、そして2度と文明として蘇る事がなかったのか?
滅亡自体の理由は、アタワルパとワスカルの皇位継承争いの最中、見たこともなかった白人を神話の太陽神ビラコチャと勘違いした両陣営にピサロがうまく入り込み、騙し討ちで皇帝を捕らえて傀儡化したことにありますが、その他にもヨーロッパから持ち込まれた天然痘の猛威による人口の激減、馬や鉄砲を持たず、兵農分離が進んでいなったインカ軍の戦術的な弱さなど、その理由はいくつも上げることが出来ます。
しかし、私には究極的にはインカの滅亡は、「文字を持たなかった文明故の末路」だと思えるのです。
インカ人は文字を持たず、代わりにキープと呼ばれる結び目によって、情報を記録していたことはよく知られています。
この方法は、伝達できる情報量が非常に少ないだけでなく、その複雑さから伝達に当たって特別な記録者、解読者が必要だという、弱点を抱えていました。
天然痘の流行で、キープを読み解くものがいなくなり、インカの統治機構は瞬く間に崩壊しました。
軍事的敗北と統治機構の崩壊によってインカは帝国としてだけでなく、その文明そのものを継承する手段を失ったのです。
逆にインカの優れた統治機構は、スペインに引き継がれるとその力を存分に発揮し、2度と帝国の復活を許しませんでした。
つまり、スペイン人によるインカの征服とは、文字を持つ文明と、文字を持たざる文明の衝突ともいうべきもので、結果として、より優れた情報伝達手段である「文字」というイノベーションに敗れたインカは、その文明ごと文字を基盤とする文明に吸収されたのだ、と言えるのではないでしょうか。
「固有の文字(情報伝達手段)を失った時、その文明は滅びる」が歴史の教訓ならば、世界に稀な特殊な文字体系を持つ日本も、いつか固有の文字を失ったら、他の文明に吸収される日も来るかもしれません。東南アジアでもマレーシアやインドネシアあたりだと13世紀くらいまでは、文字といえばサンスクリット語が支配的でしたが、その後アラビア文字が支配的になり、マレー語のような現地の言葉がアラビア文字で表記されるようになりました。19世紀になると、英国やオランダによる植民地化の結果、今度はラテン文字のアルファベットによる表記が支配的になっていきました。1980年代くらいになると、トイレを含め観光地などでは、日本語の表記がかなり見られましたが、現在急速に増えているのは中国語です。
世界の多くの地域では、その時々で覇権を及ぼしてくる文明が変わり、その都度使われている文字まで変わっていく社会があります。インドネシアでも、人口が多くそれなりに大きな王国のあったジャワ島では、独自のジャワ語の表記法が発達しましたが、結局今ではラテン文字のアルファベット表記が支配的です。文字とは少し違うのかもしれませんが、アラビア数字がなぜ世界中で使われるのかには興味があります。
※追記
ググれよって話ですね。ググったら色々出てきました。
https://matome.naver.jp/m/odai/2150530928135118101