格付け会社の2社寡占と利益相反問題を抱えるビジネスモデルの今後
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格付け会社のビジネスモデル、環境、リスクについて分かりやすい記事。
強みは、格付けが「ルール」に組み込まれていること。
投資適格社債にしか適格できないといったファンドは少なくない。そして企業は資金調達をできる限り安くしたい。それゆえに格付けをしてもらうことが必要だし、投資家も格付けのレポートを買う(社内的には一種免罪符の役割もあるだろう)。
組み込まれてインフラとなっているが、利益相反構造になっているという強みと弱みの表裏。
格付けも信用情報の一種で、日本でも同じような課題は信用情報においてあろう。格付会社の一番の問題は、寡占化ではなく、利益相反にあると考えている。
この記事でいう利益相反とは、発行体(格付けを付与してもらう会社)が、格付会社にフィーを支払う仕組みになっているため、格付の引き下げが発行体による格付取り下げにつながることから、適切な格付よりも高い格付けが付与されがちになる、ということである。
だとすれば、マーケット参加者全員で格付会社のコストを負担し、発行体がフィーを払うという現状を変えればよいのではないか、という発想をする方も多いかと思う。
しかし、この発想を完全に否定したのが、3.11後の電力債(特に東電債)に対するマーケットの動きである。
当時は、電力会社が格下げされることにより、多くの機関投資家はルール上電力債を保有し続けることができなくなるため、社債マーケットが電力債の売りで溢れ、電力債ひいては、社債マーケット全体がクラッシュすることが恐れられていた。このことを背景に、マーケット参加者が(更に言えば当局も)、格付会社に対して、電力会社の格付けを引き下げないように圧力をかける、という動きが起こったのである。
この様な動きが起こる以上、マーケット参加者全体で格付機関のコストを負担したとしても、利益相反が起こることになる。
現在のクレジットマーケットでは、格付は無くてはならないものになっている。一方で、誰が格付会社のコストを負担しても利益相反になる。
以上の点から、利益相反は格付会社の最大の問題だと考えている次第である。