小規模会社をM&Aするときに使う株式評価の方法
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何人かの方が言っている通り、取引相場のない株式の評価というのは、第三者間の資本等取引というカテゴリーに入り、極端な話いくらで取引しても良いことになっています。
ただそれでは売買にならないので、色々と理屈をつけて会社の価格というのを決めるのですね。
会社の価値の考え方は大きく分けてストックアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つがあり、会社の大きさ、内容、将来性、業種だけでなく、時期や売買の目的などによって適切な方法が異なります。
ただ正解に近いというのはあっても絶対に正しいという方法はなく、逆に言えば当事者が納得できる値付けをどのように選ぶかによって、ディールの成約自体が左右されるということになるのです。
一般に大企業の場合は、未公開であっても公開企業の取引相場に類似すると考えられる為、マルチプルのような方法が多く採用されますし、スタートアップなどでは買い手が望むのは成長性だけですので、将来のキャッシュフローを重視したDCFや、投資対効果を着目した収益還元法やEBIT倍率法などが採用されることが多いのです。(ただし例外はいくらでもあります)
これがトラディショナルな地方の中小企業となると、公開企業との類似性や成長性、あるいは収益性との連動性が薄くなり、所有財産に着目した方法、即ちストックアプローチの方法を採用することが多くなります。
このピックにある方法は時価純資産価額法といいますが、元々は相続税財産基本通達の原則評価法の変形のため、税務的には標準的な方法とも言え、中小企業の実態にもあっていると言われています。
因みに、私もよくこの方法を広めた主犯の一人に挙げられますが、元々日本の中小企業にこの方法があっていると論じたのは実はアメリカの某巨大投資銀行だったりします。
尚、理屈もそうなのですが、本当のことを言うと地方の中小企業の売買でインカムやマーケットアプローチの株価をつけようものなら「うちの工場や本社の価値がなんで株価に入ってないんだ! 俺を騙すつもりか」と言われ納得してもら得ない、ということもあります。
因みに私自身は、本当は不動産のように取引相場に基づく価格が一番正しいと思っていて、売買事例を集めて適正相場を算定する会社の役員も先日までやっていました。
物の価値というのは理屈だけではないというのは、会社も一緒だということですね。記事にある実務のど真ん中にいます。
みなさんのコメントを拝見すると論点がいくつかに収斂されます。
1.中小企業独自のバリュエーションである、時価純資産+のれん(利益の数年分)について
2.両手仲介の妥当性
3.アドバイザーの質
それぞれ言いたいことは山ほどあるのですが、1000文字では収まりきらないと思いますので1点だけ
2.両手仲介について
ディール価格が1円でも50億円(中小企業のディールならこれ以上の価格がつくことは殆どありません)でもアドバイザーの工数というのは殆ど変わりません。
当然、アドバイザー報酬はディール価格に比例しますので、価格がつかない企業のM&Aは引き受け手がいなくなります。
同じように、ディール価格が数千万円程度でも工数倒れになってしまい片側のアドバイザーのみだと引き受けないファームが殆どです。
しかし、数だけで見ればこの規模のディールが多数を占め、ニーズが多いわけです。
従って、両手仲介というのはニーズを満たすための必要悪であると考えています。
また、売手・買手の利益がダイレクトにコンフリクトを起こす価格調整については、アドバイザリー契約を工夫すれば最小限度に抑えることはできます。
例えば、金額の上下で、売手・買手からいただくfeeを逆方向に動かすとかですね。
最近では、一部の上場企業で両手仲介を拒絶する動きがあります。
また、今では全て人力でやっていた業務を一部自動化するなど工数削減の動きもあります。
こういった動きが加速すれば、両手仲介という慣習はなくなると思います。
しかし、いまだにこの業界は引き受けるファームや担当者の力量にばらつきが多く、トラブルも絶えません。
株式の売却をお考えのオーナー様は、様々な会社の話を聞かれ、知識と経験のある信用できるアドバイザーに業務を委託されることを強くオススメします会社という、唯一無二のモノの価格ぎめの問題なので、基本的には「これぐらいでどうっすか?」という一対一の交渉の世界。
価額が折り合わない場合の相手への説得方法としてこういった手法がありますよ、という程度の理解でちょうどよいかと。