パーキンソン病の薬候補を発見 東大、既存薬から
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ダブラフェニブは、皮膚がんの中でも悪性黒色腫というがんに有効なことが知られている薬剤です。
実は、パーキンソン病の患者さんに、悪性黒色腫が多いという報告があり、それがこの薬が選ばれたきっかけの1つと想像します。ではなぜパーキンソン病の患者さんに悪性黒色腫が多いのかを調べてみると、パーキンソン病の原因遺伝子の1つが、悪性黒色腫の原因遺伝子の1つと場所、構造が近いことがわかりました。この原因遺伝子がつくるたんぱく質に働きかけるのが今回記事になった薬剤で、悪性黒色腫に有効なことがわかっているので、共通性のある遺伝子を原因とするパーキンソン病にももしかしたら、という期待があらかじめあったのだと思います。
特定の遺伝子を標的にしたこのような薬剤を分子標的薬と呼びますが、今回の発見のように、今後も、思わぬ形で多種類の病気を同じ薬剤で治療できてしまう、というような発見が、遺伝子の解析により進んでいくことと思います。論文がまだオンライン掲載されていなくて、大学ウェブサイトにもプレスリリースは出ていませんが、これです。
東大と神戸大、パーキンソン病の新たな治療薬候補を同定
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP487145_W8A800C1000000/
悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬であるダブラフェニブが、培養細胞やマウスで効果があったというものです。
すでに使われている薬を別の疾患治療のために使うことは「ドラッグリポジショニング」とよばれています。ある程度使用実績があるので完全な新薬よりリスクは少ないだろうと見込まれています(もちろん効果があるか、副作用がないかは確認する必要はあります)。これまでの手法での新薬開発が技術的、そして経済的にも限界に達しつつある今、リポジショニング、リパーパシングを成功させることは、プレシジョンメディスンを実現するためにも重要な課題です。今のところ新薬として高い薬価を維持したまま適応拡大ができる場合は製薬企業も渋々応じてくれますが、ジェネリックに新たな薬効が認められてもその先に進めるのは極めて困難(薬価の課題は日本市場の課題)。分子標的薬とは言え抗がん剤として開発された薬を、長期投与が必要な疾患に適応拡大するには、非臨床試験からやり直すことになるので少なくとも数十億円の開発費がかかり、さらに治験の組み方も難しいことを考えると、事業会社と規制側がタッグを組む事が大きなキーになると思います。