トルコ大統領が米批判 「牧師とNATO同盟国を引き換えにしている」
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この「牧師」というのは、20年間トルコで教会を開いている米国人で、2年前にトルコで起きたクー・デタ未遂に関与した容疑で先日逮捕されました。2年前の事件で今になって逮捕されたのは、トルコが米国に引き渡しを求めている宗教集団の首領、フェトゥフッラー・ギュレン氏との交換に使うつもりだったのでしょう。ですから、牧師の逮捕そのものについては、トルコ政府に正当性があるかはかなり疑問ですし、NATO云々も関係のないことです。
トルコ政府は、牧師の逮捕に米国が経済制裁という方法でこれほど反応するとは誤算だったと思います。トランプ大統領はペンス副大統領にとって、トルコの通貨や経済に関心はないでしょうが、牧師の所属するキリスト教福音派は、非常に重要な支持集団です。もっとも、トルコ政府にも面子があり、エルドアン大統領は米国に屈したというかたちは絶対に避けたいはずです。本当に牧師を取り戻すなら、いきなり経済制裁ではなく、水面下で脅す方がトルコの文化に合っているでしょう。
米国による経済制裁の示唆は絶大な効果があり、すでに旧下落していたトルコ・リラに追い打ちをかけました。エルドアン大統領がとりうる措置は、
・牧師の釈放などの米国への譲歩
・公共事業などの過剰な財政支出の引き締め
・公定利率を上げて景気の過熱を抑える
などがありますが、そのいずれもとらず、米国に対して、NATOからトルコが離れてもいいのか、と脅してみるくらいしかしていません。月曜日にマーケットが開いてリラの下落が続けばいよいよ危ないし、他の新興国にも波及していますが、トルコ政府が有効な手立てをとりそうにはありません。今回のトランプ政権によるトルコへの制裁は、単にキリスト教福音派牧師の拘束への報復と見ない方がいいでしょう。
シリア内戦への各国の干渉の結果、ロシアーイランートルコは最終的に同じスタンスを取ることになり、アメリカーサウジーUAEの陣営とは利害が異なるグループを形成しました。
これを和平会談の行われた場所からアスタナ連合とかアスタナ枢軸といいます。
トランプ政権が現在攻撃しているのは、ロシアにしろイランにしろ全てこのアスタナ枢軸国です。
トランプ政権のメッセージは明確で、つまりロシアとイランとは手を切れ、ということでしょう。
一方でシリア国内のクルド人独立派を抑えるだけでなく、ひいてはイスラムの盟主としての国際的地位を確立したいトルコとしては、クルド人を支援し、サウジの後ろ盾であるアメリカに全面屈服することは、避けたいところです。
この問題はエルドアン政権の存在意義に直結するところがある為、今後のトランプ政権の出方によっては、かなり深刻な対立を招きかねないように思います。