イラン、核合意巡り米提訴 離脱補償要求、ICJに
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国際司法裁判所に提訴とのことですが、ここで制度として整理しておきます。国際司法裁判所は国家間の紛争ごとを審議して国際法による判決をくだすことができます。国際司法裁判所の判決は判例として国際規範や国際法の一部を形成することもあり得ます。
弱点は実行面です。国家間の紛争において、一方が同意していない場合、裁判に強制的に参加させることはできません。また、判決の履行においても国が裁判実施に同意していない限り従う必要はありません。よってイランの目的は最初からアメリカに賠償を履行させることではなく国際的な正しさは自分たちにあると国際社会に証明することにあります。
ちなみに国際司法裁判所と安保理決議とは実際は無関係ですので拒否権うんぬんという話は関係ありません。もともと安保理決議は国際司法裁判所の判決よりも国際法としては上位になります。それは安保理決議は国連加盟国に履行義務が発生し、履行しない場合は制裁の対象になるからです。安保理決議が通るのであれば国際司法裁判所の判決は本来なら必要ありません。過去判例から、安保理常任理事国として拒否権を持つ米国は強い。
ニカラグア事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%A2%E4%BA%8B%E4%BB%B6
ちなみにJCPOA(核合意)上でも紛争解決メカニズムが定められていますが、これもまた最後は安保理決議となる形のため、拒否権を持つ米国が強い。
結論:米国は強い。国際司法裁判所(ICJ)は、国連の機関の一つで、国家間の係争案件について審理する司法機関です。扱われる案件は、領土問題などが多いです。提訴するのも被告になるのも国家です。この場合、イランという国が米国という国を提訴することになります。
国際司法裁判所での裁判は、当事国双方が、係争案件を付託することに同意しなければ始められません。つまり、イランは一方的に提訴することはできますが、米国がこの案件を国際司法裁判所で扱うことに同意しなければ、裁判は始まらないし、判決が出ることもありません。たとえば、日本政府は竹島問題を国際司法裁判所で解決しようと主張してきましたが、韓国政府が同意しないので、裁判になっていません。この件は、イランが米国を提訴した、というパフォーマンスだけに終わる可能性が高いです。仮に判決が出ても、法的拘束力や判決を執行できる機関は国連にはありません。
イランは、国際司法裁判所を利用した経験が多い国です。1950年代のモサデグ政権によるアングロ・イラニアン・オイル国有化問題、イラン革命直後の米大使館人質事件、米海軍巡洋艦によるイラン航空旅客機撃墜事件などが国際司法裁判所に付託されてきました。イラン政府は、国際司法裁判所にある程度の信頼と有効性を認めているのでしょう。
なお、米国による経済制裁のような貿易問題は、世界貿易機関(WTO)に提訴する方が妥当であるのですが、米国の反対があってイランはWTOに加盟できないでいるため、提訴できません。