【前田育男×永井一史】デザイナーは本質の追求者だ
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経済産業省の「デザイン経営」宣言をめぐり、一流クリエイター・経営者がわかりやすく本質を説明する全2回の連載記事。デザインの本質を追究し、わかりやすく解説されている必読の記事です。
行政官である私が、パーソンズ美術大学での留学やTakramでのインターンで痛感したのは、自分は市場や業界を分解・分析的に物事を見る癖がよくも悪くもついていて、デザイナーと考え方のアプローチが全く違うな、ということでした。
デザイナーは、手がけるプロジェクトについて、”他のサービスに比べてこういう機能が足りない、とか、ビジネスチャンスがある”という環境や外部を分析するのではなく、”事業の本質は何か”ということを比喩やビジュアルといった感覚・センスで捉えるものも用いながら追究し、たどり着いた内なるコンセプトを元に、無数の、そして荒唐無稽とも思えるものも含めてアイデアを出して行きます。
出てくるアウトプットは、分析的な”成功する確率が高いだろう”といったものではなく、”自分たちのアイデンティティに根ざし、そして面白いヒントがたくさん詰まっている”といったものになっています。
デザインは0→1を生むと言われている所以はこの考え方にあるのかと思います。ビジネスを確率的にうまく動かしていく技術ではなく、自分たちは何者なのかを問い、そこから今までにないアイデアや事業を生んでいく技術なのだなと、(修行中ですが)実感しています。デザイナーの役割は企業内に潜在する社会へのメッセージを探し、それを社会に伝わるように発信すること、と理解しました。
前回の記事で、ソフトシステムズ方法論、U理論をコメントしましたが正にそのための方法論だと感じました。
【ソフトシステムズ方法論】
以下は順番通りではなく、行ったり来たりするとされています。
①問題状況の表現(共有)
②活動システムの定義
③活動モデルの概念化
④活動モデルと現実の比較
⑤変革案の立案
⑥変革案の実行
⑦振り返り
平行して組織内のの文化、社会、政治分析も行う。
ポイントは以下だと思っています。
(1)関わる人たちが見えている状況を共有する
(2)顧客視点にたった自分達の活動の理想化をシステム的に行う。
(3)理想化した活動モデルを現実と比較することで改善策を立案する。
ソフトシステムズ方法論の良いところはこれらをある程度は「可視化」しながら進められるところ。
【U理論】
①ダウンローディング(先入観の停止)
②観る
③感じ取る
④プレゼンシング
⑤結晶化
⑥プロトタイピング
⑦実践
①~③はソフトシステムズ方法論の①と関連していると捉えています。
先入観を捨て、異なる立場の人達の意見をしっかりと聞き、全体として何が起こっているのかを感じ取るところからがスタート。
「これらってつまりこういう価値観だよね」とみんなが腹落ちすることを、ソフトシステムズ方法論は「アコモデーション」、U理論は「プレゼンシング」と表現しています。(双方若干違いますが)
デザイン経営とは「アコモデーション」あるいは「プレゼンシング」を産み出しプロトタイピングを通じてプロダクトまで落とし込む経営思想と言えると思います。抽象的な言葉ではなく、いかに目に見える形にするか。
がデザインシンキングのミソ。マーケットインではなく、本質を掴んだプロダクトアウトの姿勢。
本質の探求者こそがデザイナーであり、その資質は一般教養として求められる。
というのは記載の通りですが、安直なノウハウは無く、ただひたすらに手間をかけて問い直し続ける事でしか辿り着けないという事ですね。
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その通りです。そして、もうひとつの要素は、やはり抽出したイズムを「形」にできるという点。形のない「言葉」は、個人の中でさまざまな解釈やイメージを喚起するがゆえに、議論が紛糾したり、正しく伝わらないなどのリスクが付きまといます。
しかし、正しいアプローチで表現された「形」は、圧倒的なコンセンサスを生み出す力を持っている。
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効率が重要視される時代ではありますが、だからこそ安易に導き出された答えはいち早く捨てるべきなんです。効率的に楽に情報や価値を集めることにばかりフォーカスすると、本質を見失ってしまう。
手間を掛けて、何度も何度も問い直すことで見えてくるものがある。