巨大IT企業の銀行業参入に対する「期待と警戒」
コメント
注目のコメント
既に丁寧な議論がなされているので、短くポイントだけ述べさせていただきます。
1. 現在の金融システムの特徴は、民間銀行の債務である預金が主たる決済手段として用いられていることであり、それがネットワークの特性を持つだけに、特別な規制体系が正当化されていると思います。
2. IT側からの参入者にとっては、蓄積した情報を与信審査にだけ使用するのでなく、マーケティングにも使用しないと意味が乏しいことも事実だと思います。
3. こうした参入者にとっては、既存の金融システムの下で銀行免許をとって既存の金融機関と競争するよりも、いわば新たな金融システムを作ってしまう方が長期的なメリットが大きいと思います。(過去コメント再掲)
金融付加価値は大きく「決済(資金移転)」「資金供与」「資産運用」「リスク移転」の4つに分類されますが、これら金融付加価値の殆ど全ては銀行以外のモノライン業者であっても免許・登録さえクリアすれば利用者に提供することができるようになっています(ex 貸金業者による融資、資金移動業者による送金等)。つまり、銀行しか提供できない金融付加価値は「決済(資金移転)」の一部である「預金受入れ」のみであり、それが規制の壁に守られた銀行のクラウンジュエルであるというのが機能・付加価値面からの外形的な整理だと思います。
一方、預金金利がほぼゼロに等しい現在の金融環境において、預金に期待される大きな便益は利息ではなく、現金価値保管や決済等の機能になっています。ただ、これら機能は、現金として引き出しができない等の不便は一部にあるものの、電子マネー等の新たなサービスに代替されつつあり、実は預金すらももはや銀行でなければ提供できない付加価値とは言えない状況に実質的にあるように考えます。
こうした現状分析を前提とし、「銀行」「銀行業」のあり方を考えたとき、銀行の本質は 「金融付加価値の提供」 ではなく、「個人の生活活動や法人の事業活動等の情報集積・活用をベースにした金融・非金融付加価値の提供」になりつつあるという考えに至ります。
その意味で、実は銀行は既にAmazonやGoogle、楽天、メルカリ等と同じビジネスフィールドで競争することを余儀なくされており、その旗印のひとつに銀行ライセンスがあるかどうかはあまり関係ないのではないでしょうか。記事内で例として用いられているAmazonの銀行免許取得というのは実はイベントとしてはあまり意味はなく、それを同社が明示的に打ち出す頃には既に勝負はほぼ決してしまっているという事態になっている可能性もあるように思います。論旨から外れますが、日本の銀行法はある意味で公平性に欠けています。
銀行が非金融事業会社保有などを通じて他のビジネスに参入することができない点は、日米の差はさほどありません。しかし、一般事業会社が銀行業に参入することは、日本でできてもアメリカではできません。
この非対称性の問題をクリアすることが、議論の前提ではないでしょうか?
基本的に、テクノロジーを背景とした革新的な金融サービスを提供する参入者は歓迎すべきだとは思いますが、まずはゲームのルールを米国流に整える必要を感じます。