29年の需給ギャップ、9年ぶりプラス デフレ脱却判断に環境整う
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一言で言ってしまえば、需給ギャップは、我が国で実際に生産されたモノやサービス(実際のGDP)と、我が国が持つ労働力、資本設備、技術を目一杯使ったら生産できるはずのモノやサービス(潜在的なGDP)とのギャップです。これがマイナスということは、労働力・資本設備・技術が遊んでいる状態で、需要があればそれらがもっと活用されて生産が増えるはず。つまり、経済が「需要不足」の状態にあるわけです。
今回これがプラスに転じたということは、我が国の労働力・資本設備・技術が目一杯以上に活用されて、人手や生産設備が足りない状態になったということで、このうえ更に安定的に生産、つまり実際のGDPを増やすには、労働力、資本設備、技術を増やして潜在的なGDPを大きくしなければなりません。需要ばかりが増えると、「需要過多」になって景気が過熱してしまいます。
政府と中央銀行が経済を成長させる手段は、基本的に金融政策、財政政策、構造改革(成長戦略)の3つです。金融政策と財政政策は、需要を増やして遊んでいる生産手段の活用を促し、経済規模を大きくする「需要サイド」の政策です。構造改革は、ビジネス環境を整えて労働力の活用を促し、外国企業を呼び込み、日本企業を我が国で育て、イノベーションを誘発して潜在的なGDPそのものを大きくする「供給サイド」の政策です。
需要不足がある状態なら金融緩和と財政支出の拡大はそれなりに正当化されますが、需要過多になったら話は別。本当にやるべきは潜在的な生産力を高める構造改革です。需要超過の状態で2%のインフレ目標達成がすべてであるかのような主張を維持し、ひたすら金融緩和と財政支出の拡大に走るのは、それはそれでリスクのあることだと承知しておく必要があるように感じます。米国のGDPギャップがようやく昨年プラスに転じたのに、日本のGDPギャップがプラスに転じているわけないでしょう。
実際、IMFが計測する日本のGDPギャップはまだマイナスです。
日本経済が正常化しているのであれば、もっと物価・賃金が上昇していてしかるべきです。
政府はもっと実態に即したGDPギャップの推計方法を確立すべきでしょう。問題なのは、需給ギャップと物価の関係が変化していることです。需給ギャップが改善しても、以前よりも物価が上がりにくくなっています。なので、需給ギャップが解消したというだけで、自動的に物価が上がっていくわけではありません。やはり、賃金が上がることが不可欠です。