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印象派に先んじてリアリズムの潮流がありました。文学でいえばモーパッサンとかフローベール、『女の一生』『脂肪の塊』『ボヴァリー夫人』のように、人間の醜さや利己心を描き、女性にも焦点を当てつつ、みじめな人生があることをこれでもかというくらいに描きました。絵画でいうとクールベなどもリアリズムの側面が大きかった人です。
 今日でもフランスの文化には、露悪的というか、人間の欠点や弱みを強調して注目する、時に皮肉るというところがあります。単に意地が悪いという話ではなく、そういう負の側面もよく理解しなければ本当に人間や社会を理解したとはいえないし、改善もありえない、という発想でもあります。そういうリアリティ直視できなければ現実逃避であるとして馬鹿にするむきもあります。
 こういうリアリズム的発想は古典主義に分類されるようなヴィクトル・ユゴーのような作家にもよくみられるもので、19世紀にはフランスを中心に広く見られるようになったものです。

「あるべき世界(イデア)があって、人々はそれのみを見て従うべきである」という発想と「世界には多様な側面や価値観がありひとつの世界観が押しつけられるべきではない」という発想の対立は、古代ギリシアのプラトンによるイデア論とアリストテレスの関係にまでさかのぼることができます。カール・ポパーのような哲学者にいわせるとこの対立は、政治においては全体主義と民主主義の対立、経済においては共産主義と資本主義の対立にまで発展したということになります。
 絵画や文学の世界においてもこの対立が続き、世界には多様な価値観や側面があり、理解されるべき、という発想が19世紀後半のヨーロッパで強くなっていき、現在に至ります。リアリズムなどから始まり、次に印象派が現れました。この変化は音楽にも起こり、ドビュッシーやラヴェル、さらには平均律の音階まで否定されて、現代音楽へと発展していきました。
 絵画の世界だと、印象派に次いで、日本の浮世絵などからの影響を強く受けたセザンヌやゴッホ、ゴーギャンらのポスト印象派、そしてアフリカ美術の強い影響を受けたピカソらのキュビスムによって、20世紀の現代美術が始まりました。彼らが現実の新しい側面を把握して表現したことは、美術界の守旧派を含め、激しい批判も受けましたが、結局時代の潮流に乗って受け入れられていきました。
日本でも現代で言うマンガのように、大衆的で一段下の扱いを受けていた浮世絵が、その文脈からは自由な欧米で人気となり、評価の逆輸入を受けた歴史があります。

印象派も米国経由で本国で地位を獲得した分野とのことですが、つくづく「伝統としがらみは紙一重」と感じます。
今連載をまとめ読みしたところです。

私も美術館好きで先日も久しぶりにぶらっとポーラ美術館を訪れ、幸せな気分を味わったところでした。
私はいつも完全に感性のみで鑑賞していました。どう好きか、どう気持ちよいかという感じでw。従って、解説に興味を持つことはありませんでしたし、作品の背景や文化や政治経済の状況等々に思いを馳せたことなどありませんでした。作家の名前もあまり覚えていませんし、特定の作家の作品を時系列で観ることもしません。いま、目の前にあるものを観て素直に感動していいたのです。それで十分楽しんでいました。

木村さんの話を読んで、少し目が覚めました。更に奥深い楽しみ方があるのだって。“絵画を読む”感覚が良く理解できました。これから新しい扉を開きます。
海外エリートの教養か…タイトルは確かに気になりますが、読まなくちゃいけないもの多過ぎて、さすがに今、西洋美術まで頭が回りませぬ。
印象派が好きな人は西洋美術史習っとくといいのかも🤔
そうでなければ、今回の連載は読まなくていい感じ
この連載について
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。これらのイノベーターたちは今、何に注目し、何に挑んでいるのか。毎週2人のイノベーターたちに、さまざまなテーマで大いに語ってもらう対談企画。