日本占領期のシンガポールから考える「親日論」の落とし穴
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シンガポールをはじめ東南アジア諸国は「親日的」だと言われます。確かにそうかもしれませんが、対日感情の変遷の歴史を知る日本人はさほど多くありません。また、日本に良い感情を持っていない人は、そもそも、日本人に近づいてこないため、見えにくい部分でもあります。
日本占領期のくびきは、いまだに、ここシンガポールでも関心が持たれることがあります。日本人とシンガポール人にとって、対極の立場から、歴史的に非常に重要な場所が「旧フォード工場」。そこで考えた「親日論」について書きました。
「現地の人脈を作るにはどうすれば良いか」とよく聞かれます。様々な方法がありますが、その一つとして、その国の歴史をよく学ぶことです。歴史が国民にどう語られているか。そこから共有できるものがあるでしょう。
歴史理解を欠いた「親日論」は、現地の人の考えが不在の、空疎なものに過ぎないと私は考えています。
追記:旧フォード工場を取り上げたのは、当時の重要な場所が保存されているからです。知識としてだけ学ぶことと、体感しながら学ぶことには、もう一段の違いがあるでしょう。また、英国統治と日本統治の内容の違いもよく考える必要があります(一元的に良い悪いではなく)。旧フォード工場は、世界でここにしかありません。オーチャードからタクシーで15分程度、入館料は約250円。
追記2:セントーサ島の戦争博物館は閉館し、今はImages of Singaporeという場所になっており、戦争に関する展示はかなりソフトになっています。セントーサと言えば、シロソ砦も重要な場所です。この記事は東南アジアに来る全日本人に読んでほしい。一見、世界で最も日本文化を愛していて、日本食のレストランが立ち並ぶシンガポールですら、背景には複雑かつ多様な歴史認識がある。ナイーブな「XXXは親日国」といった言説はとてもリスクが高い
そこまで行かずとも、中心地のシンガポール国立美術館では、歴史コーナーに日本占領下の昭南島の文化が展示されています。山下奉文中将率いる日本陸軍のマレー戦で活躍した95式戦車もあります。シンガポール陥落はイギリスのアジア植民地支配を崩壊させるものですが、日本の敗戦により、結局こうした展示も敵意ある視線が強く残ったものとなっています。こうした視線を学ぶことが歴史教育で、相手国との関係もそのうえで成り立つと考えます。