トランプ米大統領、サイバー軍を統合軍に格上げ
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これからは、政軍関係としての、サイバー軍による実力行使をどのように法的に扱うか、さらに国際法としてどう扱うか、の議論も、現在進行系の事象を扱いつつも必要となるでしょう。
国内法としては、例えばサイバーテロを防ぐためにどこまで個人情報にアクセスする権限を認めるか、カウンター攻撃やサーバなどへの物理攻撃をどう扱うかか、軍法会議における扱いなどです。国際法は、NATOのサイバー攻撃対応の中心であるタリン(エストニア)のCCDCOE(サイバー防衛センター Cooperative Cyber Defense Centre of Excellence)において、非公式ながら試案が検討されていて、今年は第2弾のタリンマニュアル2.0が発表されています。
日本は憲法の規定上、軍法会議が持てない上に、憲法の規定により不正アクセス禁止法があり、テロの疑いがあっても捜査上の権限に限界があります。インフラにサイバー攻撃を受けた場合に、反撃をしても良いと言う議論が今年から始まりました。また、予防的先制攻撃(アクティブディフェンス)は可能かと言う議論もあります。
参考
タリンマニュアル2.0
https://newspicks.com/news/2050072/アメリカには陸海空海兵隊及び沿岸警備隊の5軍と、その混成からなる北方軍、中央軍、アフリカ軍、ヨーロッパ軍、太平洋軍、南方軍、特殊作戦軍、戦略軍、輸送軍という9つの統合軍があります。
サイバー軍もともと、核ミサイルなどを統括する戦略軍の傘下にある副統合軍の一つでしたが、諜報活動の円滑化の観点から、国家安全保障局(NSA)のキース・アレキサンダー大将が、司令官を兼任してきました。
しかし、昨今は中国のサイバー軍拡大の脅威に対抗する為、NSAからの独立を求める声が上がっており、今回新たにメイビル中将を司令官に任じ、正式に戦略軍傘下の副統合軍から、独立した統合軍に格上げさせることになった訳です。
これによりサイバー軍は空軍とNSAの二重管轄から、直接国防総省が管轄することになります。
統合軍の司令官は原則大将が就任することになっている為、恐らく今回の人事は昇進含みでしょう。
尚、同じ戦略軍傘下の空軍宇宙軍団についても、近日中に宇宙軍として副統合軍に格上げされる予定になっているようです。これはなかなかインパクトのあるニュースですね。
国防の与件に「サイバー対策」が重視される昨今、中国への対抗力強化の文脈を含めてアメリカが本気を出してきたものだと思われます。
補足として、アメリカ軍では「UCC(統合軍:Unified Combatant Command)」なるものが編成されており、地域別に6つ&機能別に3つ編成されています。
このうち、機能別の3編成は下記だったのですが、
・アメリカ特殊作戦軍(USSOCOM):特殊作戦担当
・アメリカ戦略軍(USSTRATCOM):核兵器+宇宙軍+サイバー軍を統括
・アメリカ輸送軍(USTRANSCOM):戦略輸送担当
ここからサイバー軍が(戦略軍から)上記の横並びに格上げされ、UCCが10編成に再編されるということになる模様です。
また、サイバー軍はアメリカ国防総省の諜報機関であるNSA(アメリカ国家安全保障局:National Security Agency)管轄でした。
(スノーデン文書であらためて有名になった通信傍受システム「エシュロン」も、このNSA主体で運営されていると言われています。)
この中で重要視されているサイバー軍は、今後はNSAの上位組織・統合官庁であるアメリカ国防総省で直接管轄されることになる、という話のようです。
いずれにせよ、国防の与件にサイバー空間が重要視される時代に確実に突入しつつあることは、しっかり意識して行かねばなりません。