この連載について
100年以上もの間、「お買い物の王者」として君臨してきた百貨店が苦境にあえいでいる。米AmazonやZOZOTOWNなどのEC企業が台頭し、消費者の購買行動はガラリと変わり始め、百貨店は多くの消費者にとって不要な存在になった。役目を終えつつある百貨店の今を、NewsPicks編集部が追った。
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三越と伊勢丹が経営統合。百貨店事業を中心に不動産、カード事業、EC事業も手掛ける。基幹店の構造改革、支店・地方店・海外店・中小型店のビジネスモデルを再構築で収益回復を目指す。ニッコウトラベルを完全子会社化するなどシナジーの高い飲食、旅行、理美容に特化し育成。
業種
百貨店
時価総額
9,951 億円
業績
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Newspicks の泉記者は、伊勢丹トップを解任された大西元社長の素顔に迫るべく、本人だけではなく、周囲の知人たち辿り続け、これまで世に出ていないエピソードをたくさん描きこみました。力作です。
一番印象に残ったのが社長である大西さんが伊勢丹の売り場で、お客さんのズボンの裾上げをしていたというエピソード。現場主義ということかもしれませんが、経営者として解決する問題のプライオリティを、あまり理解していなかったのではと感じました。
この点、サッカー日本の代表監督をなさっていた岡田監督が、「選手とは飲みにも行かない」とお話になっていたのは印象に残っています。
https://newspicks.com/news/1827781/
もっとも、これだけの思いきった施策を講じられた経営者の方を「嫌われたくない性格」とまとめてしまっているのは少々違和感がありますが。
そんな個人的な探究心からスタートした今回の取材ですが、関係者に接触するうちに、大西さんの実像が浮かび上がってきました。
「誰が伊勢丹を壊したのか」
その自分なりの答えを記事中に書き込んだつもりです。ぜひ、ご一読ください。
接客が課題であれば、工場の生産性が課題であれば、現場の雰囲気が課題であれば、そこに時間を割くのは重要。でも、他業態との競争不利が構造的に発生していたり、商形態の問題であれば、それは店頭という現場の因子は相対的に小さいように思う。
また現場の信頼は必須だが、嫌われることをする必要もある。結果が出てこないと、信頼はされないし、結果が出てくれば信頼する人が出てくる。
昨年、大西氏が社長を務められていた時の連載の最終回でもコメントしたが(下記)、このままではいけないというのは伝わるものの、根本的な百貨店の価値とは何かという部分が見えなかった。
https://newspicks.com/news/1951852?ref=user_100438
<追記>「虚像」について。それはメディアが作り出したものか、周りが作り出したものか、本人が意図したものか。百貨店業界の苦境は就任時点で明白で、そこで変化を口にしたからこそ期待値が上がった。でも実際に何かを変えるということはとても難しい。特に高い期待値を設定するとそこと実態や、周囲の期待値でギャップ=虚像となっていく。
タイトル含めて、経営改革の難しさを感じる。<追記終>
企画に対して先走りかもしれませんが、
1991年のピーク時に約10兆円あった百貨店の市場規模は、2016年には6兆円を割り込んでいるにも関わらず、店舗面積は増えています。
理由として、百貨店は売上が落ちてくると改装・増床を繰り返す傾向があり、閉店する百貨店の店舗面積を改装・増床する百貨店の店舗面積がカバーしているためです。
しかし、売上が伸びずに売場面積を拡大することは、売場面積当たりの商品販売額や従業員数一人当たりの売上高の低下になるため、営業効率も下がり続けることになります。
従来からの売上トップだった婦人服の利益の底上げと集客力の高い催事ベースの食料品をどう活かしていくかが課題ですが、これは相当苦労すると思います。当面は不採算の郊外を閉じ、自社資産で家賃のかからない都心店で集客力を増やすことが、今後の人口動態、購買力を考えても、妥当でしょう。
また、インバウンドが回復しているとは聞いていますが、基本は都心店の話であり、事業構造を変えない理由にはなりません。
亡くなった藤巻幸夫さんがいつも大西さんのことを言っておられました。それは、苦境に立つ会社の救世主のように聞こえました。突然の解任、とても残念でした。
百貨店のユニフォームを着ている人の多くは、実は百貨店の人ではなくブランドに雇用された人です。
最近、倒産した靴の大手卸シンエイ社もこの「在庫」と「販売員 (マネキン)」の二重負担によって潰れました。
この結果、ブランドはどんどん百貨店出店を避けるようになり、百貨店の商品が悪化していく流れが生まれました。
更に、これも百貨店業界の特殊性ですが、百貨店毎に異なる百貨店バーコードなるものが存在し、これを付けないと百貨店で売れないのもブランド側の3つ目の負担になっているだけでなく、結果、百貨店は、未だに単品売上管理も在庫管理もできていません。
要は、何が売れて何が欠品しているのかの分析と実行を完全にブランド任せにしていて、EC企業側から見れば大きな課題であるように見えました。
このような事を僕たちはEC企業側から何とか問題解決したいと思っている中、大西さんがこのような「裏側」をどこまでどうやって改革しようとされたのか、何が壁だったのかが少しでも本連載で明らかにしてもらえれば幸いです!
以下の岡島悦子さんと入山章栄さんの対談でも、「オーナー経営者」の優位性が語られていますが、オーナーのバックアップのない日本のサラリーマン経営者が「破壊的イノベーション」を起こすのは奇跡に近いのかもしれません。
・【岡島×入山】「羊飼い型リーダー」の時代がやってきた
https://newspicks.com/news/2414614/
現場との対話、外部とのネットワークによる新しいアイディアの実施など、現場という顧客接点の目線で「自分としてやれる事」を大西さんは精一杯やったのでしょう。
ただ、自分のビジョンを実現するために、経営陣を変える、社内の仕組みを変える、組織の構造を変えるは、企業文化を変えるなど、現場と経営トップの間に横たわる様々な「内側」の作業がある。
イメージと実態が乖離した『カリスマ経営者の虚像』というタイトルは、正にここから来ていると思う。
一方で、大西さんの話される未来はどれも素晴らしいものであった。
対外的な交流も多く、何歩も先を見ている大西さんと、社内の方との溝ができていた。
はやく進めたい気持ちを抑えて、みんなにある程度足並みを揃えていくことも、また大事だったのだと感じる。