コラム:米利上げに警鐘、カシュカリ論文の明察=唐鎌大輔氏
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ロイターに寄稿させて頂きました。いつもとは趣を変えて、唯一の反対票を投じ続けるミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁にフォーカスを当てて見ました。同総裁のエッセイはいちいち核心を突いている部分が小さくないと感じますので、お時間のある時には原文を、無い場合には本コラムでお役立て頂ければ幸いです。
原文:https://medium.com/@neelkashkari/why-i-dissented-again-b8579ab664b7足元の米国の経済情勢からすると、極めて低水準の失業率から完全雇用にあるとしたところで、現実に賃金の伸びは鈍く、また物価もインフレ目標から遠ざかっていっているわけですから、本来は「遅過ぎる利上げ」よりも「早過ぎる利上げ」を警戒する必要があるでしょう。
とはいえ、FRBの政策運営も政治によって左右されざるをえないこともたしかで、なかなか金融政策正常化に向けたうごきから転回を図るのは困難を極めそうでもあります。
このまま次の景気後退期に備えて余裕を持たせるための政策運営と強弁し実施した場合、これによってむしろ景気後退を呼び込んでしまうことにでもなれば、後になってそもそも何のために利上げやFRBのB/S縮小を急いだのか、という議論が起こるかもしれませんね。グローバル化が進み人件費の安い新興国で生産された安くて質の良い輸入品が先進国へ大量に流入するため値下げ競争が加熱したり、新興国から先進国へと労働力が流入することにより賃金上昇にブレーキがかかったりするため、基本的にグローバル化は先進国への強力なデフレ圧力となっていると思います。
そのため古い理論を盲信するのは危険ですし、直近のデータと古い理論が矛盾した際はそれぞれのリスクとベネフィットを比較し、どちらを信じるかを冷静に判断すべしという記事のスタンスには全面的に賛同します。