天皇陛下の執刀医「私以外に適任者はいない」
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冠動脈バイパス手術は、狭くなった冠動脈(心臓に酸素と栄養を届ける血管)にグラフト呼ばれる別の血管をつなげ、冠動脈の血流を増やして狭心症を改善し、心筋梗塞となるのを予防したりする手術です。
手術ストラテジーとしては、端的に言えば、①どの冠動脈に、②どのグラフトをつなげるか、だけです。ところが実は、心臓手術の中でも最も技術的に繊細であり、そのまま技術の差が結果の差として現れるものだということです。私はこれを「余白が少ない」と言っています。
それ故、この余白の少ない「冠動脈バイパス手術を誰が執刀するのか」は、患者さんが天皇陛下であろうとなかろうと大きな問題なのです。東大が部外者の医師を執刀医として招聘するのは異例中の異例ですが、その理由は前述の通りです。
余談ですが、心臓外科領域も最近は専門性が高まる傾向が強くなり、執刀医も「冠動脈バイパス手術」「弁膜症手術」「大血管手術」など、それぞれ得意とする分野を持つ傾向にあります。冠動脈バイパス手術を得意とする心臓外科医を、バイパス・サージャンと呼んでいますが、天野先生をはじめとして学会には数人の有名な医師がいます。そして、卑小ながら私もバイパス(系 ^^;)・サージャンです。不遜とも思えるぐらい、自信家ですが、外科医はこれぐらいエゴイストでないと務まりません。私見ですが、少なくとも、その地域で、「自分が一番上手にできる」と思っていないと、命がけの大手術を患者さんに勧めることはできないでしょう。
それにしても、他施設で手術するのは、普段の倍ぐらい気を遣います。私も他病院に手術に出向くことがあります。全く勝手のちがう環境で手術を普段通り行なうのは、ある意味リスクのあることなのですが、天野先生クラスだとどうなのでしょうか。ましてや患者さんが天皇陛下となると、さすがに平常心でいられるのかどうか。。
明日はその辺りの様子も分かるのかなと期待しています。「私が一番の適任者だ。私が誰より冷静に対処できる」
どれほどの努力と研鑽を積めば天野先生のような強い心を持てるのでしょうか。
天皇陛下の冠動脈バイパス手術の執刀医になるまでの経緯に、心が震えます。